前方排気・後方排気とは?メリット・デメリットについて
- 前方排気と後方排気の意味
- 前方排気と後方排気のメリット・デメリット
- 現在後方排気が多い理由
FF車や4WD車に多いエンジン横置きのレイアウトには2つのパターンがあります。
1つは前方排気、もう一つは後方排気です。
現在主流となっているのは後方排気ですが、それぞれの方式にはメリットとデメリットが存在します。
今回は前方排気と後方排気の意味、それぞれのメリット・デメリット、現在なぜ後方排気が主流となっているのかについて解説していきます。
前方排気・後方排気とは
現在FF車(FFベースの4WD車)に多いのがエンジンを横に置くレイアウトです。
そのうち、前方(ラジエター側)に排気系を持ってくるのが前方排気、後方(室内側)に排気系を持ってくるのが後方排気と言います。
- 前方排気とは、前方(ラジエター側)に排気系を、後方(室内側)に吸気系をレイアウトすること
- 後方排気とは、前方(ラジエター側)に吸気系を、後方(室内側)に排気系をレイアウトすること
昔は前方排気が主流でしたが、現在は後方排気のレイアウトが主流となっています。
前方排気のメリット・デメリット
ここからは前方排気のメリットとデメリットについて解説します。
前方排気のメリット
- 排気系のスペースを広くとることが出来る
- 排気系の熱が室内に影響しづらい
まず吸気系からです。
前方排気は後方排気よりも排気系のスペースを確保しやすいので、エキゾーストマニホールドのレイアウトの自由度が増します。
次に排気系です。
他には、排気系がエンジンを挟んで前方側にあるので、排気系の発する熱が室内に影響しにくいです。
そのため、遮熱などの熱対策が少なくて済みます。
前方排気のデメリット
- 吸気系のスペースが狭い
- 吸気系の発する騒音が室内側に聞こえやすい
- 排気系をエンジンの下に通すのでエンジン搭載位置を下げれない
- 排気系の温度が冷えやすいので、触媒が暖まりにくい
まず吸気系からです。
前方排気は吸気系のスペースが狭くなりやすいので、トルク特性に影響する吸気系のレイアウトが難しくなります。
また、吸気系が室内側に近いので、エンジンの吸気騒音が室内に入りやすく静粛性が下がりやすいです。
次に排気系です。
排気系のスペースは確保しやすいですが、エキゾーストパイプを前方から後方にエンジンの下を通すことになるので、その分エンジンの搭載位置が高くなってしまいます。
そのため、エンジンの重心が高くなるので走行安定性を高めづらいです。
そして、時代が進むにつれて問題になっていくのが排気ガスの問題です。
前方排気の場合、エキマニが冷えやすく三元触媒が暖まりにくいです。
特にコールドスタートから計測する排ガス規制では、できるだけ早く触媒の温度を上げて活性化させてやることが重要になってきます。
そのため近年のエンジンではエキマニがなく(エンジンヘッドと一体化している)早く触媒に熱が伝わるようにするといった工夫をしています。
ですので前方排気は排ガス規制に不利なレイアウトなのです。
後方排気のメリット・デメリット
ここからは後方排気のメリットとデメリットについて解説します。
後方排気のメリット
- 吸気系のスペースが広い
- 吸気系の発する騒音が室内に届きにくい
- 排気系をエンジンの下に通さないので、エンジン搭載位置を下げれる
- 排気系の温度が冷えにくいので触媒を温めやすい
まず吸気系からです。
後方排気はエンジンのトルク特性に影響する吸気系のスペースを広くとることが出来ます。
また、吸気系が室内から遠いので吸気騒音が室内に入りづらく静粛性が向上します。
次に排気系です。
後方排気はエキゾーストパイプをエンジン下にくぐらせる必要がないので、その分エンジンの搭載位置を低くすることが出来ます。
そのおかげでエンジンの重心位置が下がり、走行安定性を高められます。
排気ガスの問題に関しては、エキマニがエンジンとバルクヘッドの間に挟まれる形になるので熱が奪われにくいようになっています。
そのため、コールドスタート時に素早く触媒を温めて活性化させることで排ガス規制に適合させやすくなります。
後方排気のデメリット
- 排気系の熱が室内に影響しやすい
- 排気系のスペースが狭くなりやすい
エキマニが室内に近いので、エキマニが高温になると室内に影響を及ぼしやすいレイアウトです。
また、エンジンとバルクヘッドの間にエキマニ(とターボ車の場合ターボチャージャーと触媒)を設置することになるので、排気系のスペースが確保しづらい形式です。
なぜ現在は後方排気が主流なのか?
現在の主流は後方排気となっています。
なぜ後方排気が主流になっているのか、それは排ガス規制の問題が大きく影響しています。
エンジン自体(燃焼方法など)で排ガスをクリーンにしようという取り組みもされていますが、やはり基本となるのは触媒での処理。
なるべく早く、ロスなく温めて活性化させてやるため、現代のエンジンはエキマニとヘッドを一体化し、すぐに触媒(ターボ車の場合ターボチャージャーが先)に排ガスが行くようになっています。
触媒を素早く温めることで、使用する貴金属の量も減らすことが出来るので、排気抵抗の低減と社会問題の解決、コスト削減にも繋がります。
また、ターボチャージャーを付ける場合はエキマニを短くすることで、エンジンからの排気がすぐにターボチャージャーに届くため、レスポンスがよくなるといったメリットも。
このように、環境問題という壁に対応するにあたって後方排気はメリットが多く、前方排気から後方排気が主流になっています。
まとめ
前方排気と後方排気にはそれぞれメリット・デメリットがあります。
どちらのレイアウトを採用するかは車によって変わりますが、時代によっても変化しているのです。