エンジンのグロス値とネット値について解説
自動車のエンジン出力の話で「グロス値」と「ネット値」というのを目にする機会があると思います。
このグロス値とネット値について、間違っている人が多いようです。
そこで、今回はこのグロス値とネット値の意味、違いについて解説します。
エンジン出力試験方法には2種類の試験方法がある
日本産業規格(JIS)の定める自動車のエンジン出力試験方法には2つの試験方法があります。
参考: 自動車用エンジン出力試験方法(日本産業標準調査会ウェブサイト)
- グロス軸出力-エンジンの運転に必要な付属装置のみを装着した状態で測定した軸出力
- ネット軸出力-エンジンを車両に搭載したときとほぼ同じ付属装置を使用して測定した軸出力
グロス軸出力で計測した値を「グロス値」、
ネット軸出力で計測した値を「ネット値」と呼びます。
大まかに説明すると、グロス軸出力での試験ではエンジンの付属装置を車両に搭載する時とは違うものを装着して試験を行えます。
例えばエアクリーナーを装着しなくて良かったり、マフラーを別のものにして良かったりします。
ネット値では実際に車両に搭載されると”ほぼ”同じものを使って試験を行います。
ほぼ同じですので、条件を満たせば実際に装着するものと違うものを装着して試験を行うことができます。
グロス値とネット値ではグロス値の方が給排気抵抗等の損失(ロス)が少ないため、出力は大きい値が出やすいです。
現在使用されるのは「ネット値」
自動車メーカーがエンジンの性能を表記しているときに
- 最高出力<ネット>
- エンジン出力はすべて「ネット値」です
などと書いてあるのを見たことがあるかもしれません。
これは記載してあるエンジン性能がネット軸出力で試験したものであるということを意味します。
昔の日本車はグロス値でエンジン出力を表記していて、1985年の8月からネット値を使用するようになりました。
そのためグロス値でなくネット値であることを示すために「ネット値」や「<ネット>」と表記するようになりました。
最近ではネット値であることはもう当たり前なので、表記する自動車メーカーはほとんど見なくなりました。
よくある間違い
よくある間違いで、ネット値のことを「車に搭載した状態で計測している」というものがあります。
そのため「ネット値では変速機などの損失が~」などと書かれたりしています。
他にはシャシダイナモで測定した値のことをネット値だと思っている人が多いようです。
しかしこれらは間違いで、エンジン出力検査では基本的に変速機は取り付けずにクランクシャフトから直接検査するようになっています。
ですので変速機などの駆動部品による損失は含まれていません。
まとめ
今現在はネット値を使用し、グロス値は使われることは無くなりました。
なのでグロス値とネット値のことを知る意味も減ってきてるかもしれません。
ただ、上記の通りネット値のことを間違っている人は多いようなので、そういう人やサイトには惑わされないようにしましょう。